Eigamuroのブログ

映画は映画館で観たい。なんで? &映画や旅等に関する雑学ノート

『サピエンス全史』

f:id:Eigamuro:20210707005435j:plain『サピエンス全史』を読んだ。

正直言って、途中飛ばし読み、になってしまった。記述がくどいと思ったから。
それでも、やはり!面白く読んだ。訳者の翻訳力(日本語能力)に敬意を表したい。

私は、現在の地球上にいる人類がどうしてホモサピエンスだけなのか?前から疑問に思っていたし、植民地時代のヨーロッパ帝国(主義)の台頭にも関心があった。
この本は、そのどちらにも答えてくれていた。
本書は、第一部認知革命、第一章「唯一生きのびた人類種」から始まる。ここで著者は、種・属・科の生物学的分類からアウトラルピテクスやホモネアンデルターレンシスやホモフローレシエンスなどをとりあげて、10万年前の地球には少なくとも六つの異なるヒトの種が暮らしていた、と書いている。そして、人類種がホモサピエンスだけになった最大の要因として「虚構」(の共有)をあげる。
私達が集団として機能しえるのは何故か?
その限度数に150人説があるそうだ。150人を超える集団として機能するのは(交易も含めて)お互い共有の虚構があるからだ。
たぶん、一人一人の(or150人以下の)ネアンデルタール人とサピエンス人とでは、ネアンデルタール人の方のが体力的にも優れていた。しかし、より多くの集団行動(つまりは情報の共有。学習能力)において、サピエンス人達は他を圧倒していたのだ。

それから、下巻、第四部第14章「無知の発見と近代科学の成立」。なぜヨーロッパだったのか?、といったあたり。
この本を読んで知ったのだが、大航海は、中国明朝の武将、鄭和が1405年から1433年にかけて7回、中国から艦隊を率いてインド洋の彼方まで行っていた。という事例をあげ、帝国主義においては、ローマ人やペルシャ人や中国人たちとの違いをあげて、どこが違っていたのか、を書いている。その後中南アメリカ大陸での(アフリカからの奴隷導入も含め)大征服(虐殺)の顛末を細かに書く。
この本では中南米のアステカ帝国とインカ帝国のスペイン人による征服の記述なのだが、アメリカインデイアンとのご縁がある私には、ここら辺りの記述は、興味深かった。
まったく!ヨーロッパ人てぇのは。。!!!
そうして、科学、産業革命、資本主義(貨幣と市場。信用取引)が発達してグローバル化してきたのは、たかだか200年の間でしかない。

しかし。著者は更に書く。
第四部第19章「文明は人間を幸福にしたのか」を問い、第20章「超ホモサピエンスの時代へ」。この最終章で、生物工学(遺伝子操作)、サイボーグ工学(有機的器官と非有機的器官との組み合わせ)、更に、非有機的生命工学(インターネットワーク)。
サイボーグ工学では、脳の電気信号で動く義手をつけている人を紹介、非有機的生命工学では2005年に始まったヒューマンブレインプロジェクト。これは、コンピユーター内の電子回路に脳の神経ネットワークを模倣させることでコンピユーター内に人間の脳の再現をめざしているそうだ。
そうして、ホモサピエンスは、私達の理解能力を超える特異点にぶつかり、全く新たな世界さえ出現しうる、(どこまでが有機的生体なのか?とか感情のある電子回路をどうとらえるのか?とか。ソモソモ人間とは?と)、として、私達が試みるべきは「私達は何を望みたいのか?」を考え、科学が進もうとしている方向に影響を与えることだ。と書いている。

「自分が何を望んでいるのかもわからない、不満で無責任な神々ほど危険なものがあるだろうか?」