Eigamuroのブログ

映画は映画館で観たい。なんで? &映画や旅等に関する雑学ノート

昭和の怪物/七つの謎

『昭和の怪物 七つの謎』(講談社現代新書)、という本を、たまたまいただいて読み始めてから、同じく保阪正康氏の本『昭和史 七つの謎』(講談社文庫)を見つけて購入して、その後、加藤陽子氏の『とめられなかった戦後』(文春文庫)を読みかえした。
これらの本には、悲劇だったとしか思えないことがいくつも出てくる。

『昭和の怪物 七つの謎』は、石原かんじに二章当てていて、合計6人をとりあげている。
秘書や娘だった人々(瀬島龍三は本人)に著者がインタビューして書かれたもの。
著者が、昭和史の(著者が思っている)謎を、より身近の人(or本人)に取材して解き明かしていこうとしているせいか、時に文章が散漫になりがちな印象を受けてしまう部分もあるけれど、(こう言っていたこうだったといった文章。)、生々しさが強く感じられる本だ。
ことに瀬島龍三。本人の口から、事実を引き出そうとするのには無理があるだろう。
東條英機と石原かんじのこと(対決)が興味深かった。戦争当時期、東條英機が首相になってしまったことも、また昭和の悲劇だった、と感じられた。
もう一つ。昭和十年代の軍事主導体制に反対していた吉田茂が、敗戦後の占領期に首相だったことは、改めて特筆されておくことだと同意した。

『昭和史 七つの謎』(講談社文庫)
これは、明らかに保阪正康氏の文章による。
第1話「日本の文化大革命はなぜ起きたか?」で、五・一五事件二・二六事件をとりあげ、なぜ日本人は変調したか?と問う。
第2話「真珠湾奇襲攻撃でなぜ上陸作戦を行わなかったか?」
第3話「戦前戦時下の日本のスパイ合戦はどのようなものだったか?」
第4話「東日本社会主義民共和国は誕生しえたか?」
第5話「なぜ陸軍軍人だけが東京裁判で絞首刑になったか?」
第6話で、占領下で反GHQ地下運動がなかったのはなぜか?を書き、第7話で、M資金について書く。
私は、殊に第2話。真珠湾奇襲攻撃で第二波攻撃をしなかったのは?まことに不思議。

加藤陽子氏の『とめられなかった戦争』も面白く読んだ。
この本は、2011年5月に、NHK教育テレビで四回にわたって放映された「さかのぼり日本史 昭和 とめられなかった戦争」の内容にそって書かれたもの、で。然るに。敗戦への道(1944/昭和19年)から、日米開戦(1941/昭和16年)、日中戦争長期化の誤算(1937/昭和12年)、満州事変・暴走の原点(1933/昭和8年)、といった章たてになっている。
1945年3月10日の東京大空襲で空襲被害を被った方々による慰霊祭の様子から始まり、第4回の最後には、国策として満州に送り出された開拓団の生き残りの方々による慰霊祭の様子、が映し出されていた、そうで。
この番組を作製した岩田真治ディレクターの意図は、なぜ戦争の拡大を止めることができなかったのか?、なぜ一年早く戦争をやめられなかったのか?との問いを、人々の思いが今なお染みついている土地と史料から考えることにあった。そうです。
第1章で、ターニングポイントは、1944年7月9日のアメリカ軍サイパン島占領宣言にあったとして、その後の、1945年8月15日までの一年あまりの間の戦死者の、あまりの数の多さ、犠牲が拡大したことにふれて、その悲劇は戦後もなお負の遺産を残している、と書いている。
つまり。軍人軍属には恩給遺族年金という形で補償しているのに、民間の例えば空襲被害者への補償はないことの不公平さや、アジア諸国に対する戦争責任問題をあげている。
ことに後記、戦争責任問題。戦争責任を認めて謝罪することがなかなかできないのは、この、1944年7月から以後の一年あまりに味わった悲惨な体験に対する、こだわりがあるからだ、と書いている。実際、私も酷いめにあったのだといったこだわりが残らざるをえないような、戦争の終わり方だった、と。