Eigamuroのブログ

映画は映画館で観たい。なんで? &映画や旅等に関する雑学ノート

『できそこないの男たち』

光文社新書。 ¥820+税 著者、福岡伸一
1959年東京都生まれ。
京都大学卒。ロックフェラー大及びハーバード大研究員、京大助教授を経て、青山学院大学理工学部化学・生命科学科教授。専攻は分子生物学


「地球が誕生したのが46億年前。そこから最初の生命が誕生するまでに約10億年。そして生命が現われてからさらに10億年、この間、生物の性は単一で、すべてがメスだった。
すべての生物はまずメスとして発生する。 メスは太くて強い縦糸であり、オスは、そのメスの系譜を橋渡しする使い走りに過ぎない。」

著者はプロローグの後に、まず精子の発見に纏わる話から章を興す。 (光学顕微鏡のレンズやら、光学顕微鏡で対象をみるための方法やら、詳しいことが物語風に書かれているが・・略)
ついで、X、Y染色体に纏わる話を書き、それからようやく、性決定遺伝子のことになる。
つまり、文章は物語的で、エピソードに富んでいる。
時として、長すぎと感じたりして辟易させられる部分もあった。
ともかく。性決定遺伝子。SRY遺伝子、というそうだ。

第六章〔ミュラー博士とウォルフ博士〕
「人間は考える管」とある。 口・食道・胃・腸・肛門とあるが… 「女性は尿排泄のための管と生殖のための管が分かれており、男性は排泄物である尿と子孫維持のために不可欠な精子が、同じ管」なのはなぜか。
「なぜそのようになっているかはわからない。が、いかにしてかはわかる。生物学はWHYには答えられないが、HOWを語ることはできる」 として、受精成立後の受精卵のプログラムを詳細に書く。
受精。スタートから一瞬の遅滞もない不可逆な進行が始まる。 受精卵の染色体型がXXなのか、XYなのかこの時点では判別できない。 XXかXYかに関わらず、受精卵のプログラムはしばらくの間、生命の基本仕様に従って展開進行する。
…受精後、すべての胎児は染色体型に関係なく、約7週めまでは同じ道をいく。 ここまででヒトらしくなり、足の間に割れ目がある。
生命の基本仕様、それはまず女である。
割れ目から二つの細い陥入路が奥へと延びる。
発見した人の名をとり、それぞれミュラー管・ウォルフ管と呼ぶ。
7週め、ある特別な蛋白質が作られる。この蛋白質は、Y染色体にのみ作用する。 つまり、SRY遺伝子がある場所だ。 そして、SRY遺伝子のスイッチがオンになる。
そうすると、ミュラー管抑制因子という、蛋白質の一種が発動する。 発動すると、、ミュラー管の細胞群はやがて消失していく。 卵管・子宮・膣になるべき細胞群がだ。
膣が開口する必要がなくなった割れ目が閉じ合わされていく。細胞と細胞が接合していく、こうして蟻のと渡りとしての痕跡を残す。(女性には蟻のと渡りはない、ということだ、な) さらに、テストステロンという男性ホルモンの生産と放出を始める。 このテストステロンが、ウォルフ管に作用し、精巣上体・輸精管・精嚢などを形成していく。 (ペニスの形成は略す)
第七章で、必要になった時だけオスを作り出すアリマキという昆虫のことを書き、どうしてオスが誕生したかに触れ、
八章のタイトルが「弱きもの、汝の名は男なり」として、生物学的に、明らかに男性のが弱いことを論証する。
九章は「Yの旅路」。
で、1970年代に分子生物学的な技術(?遺伝子工学)の登場後、ヒトゲノム計画の情報からの、ヒトの世界への広がり、つまり民俗学的考察をふまえて、男の役割が語られる。 ヒトはアフリカから世界中に散らばった。 男たちがなした最大の偉業は、母の遺伝子を別の娘のもとに運び、混ぜ合わせることだった、と。
最後にエピローグ。
「生殖行為が、なぜあの快感と結びついているのか」を考える。
生物学者脳科学者が説く説明では満足しない。
「性的快感として、なぜあの独特の快感が選びとられたのか」なのだった。
これは、あくまでも男性側の快感だな。
  ………

著者は、人間の五感以外に【加速覚】をあげている。【加速を感じる知覚】。 それは、なぜ快感なのか・・?


…………
ジェットコースターが好きな女性だっているだろうに・・?


【加速覚】
これは、……この語を知っただけでも、この本を読んだ価値が大いにあった。
(私は映画を観るのが好きだし、電車や自動車に乗って流れゆく景色を目にするのが好きである)